■文章編3      ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓      ┃ ┃      ┃ オプションあれやこれや ┃      ┃ ┃      ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ ■オプション 「オプション(option)」という言葉は,とくにコンピュータの専門用語とい うわけではありません。日常用語がコンピュータ用語の中に入ってきたもので, そのため,コンピュータ用語辞典の類を調べてもまず載ってはいないでしょう。 もともとの意味は,「取捨,選択,選択の自由」といったような感じで,日 常生活では,たとえば海外旅行のパンフレットで次のように使われたりします ね。 「パリ・オランダ8日間○万円コースフリータイムにはベルサイユ見学や風車 小屋観光などのオプショナルツアーも充実」 ここで「オプショナルツアー」とあるのがそうで,このツアーの本筋はパリ ・オランダの名所巡りなんでしょうが,その中でベルサイユ宮殿や風車小屋は 「行っても可,行かなくても可」の自由選択コースとして準備,提供されてい る,ということです(料金も当然別枠になっているはず)。 あるいは,サーティワンでバニラアイスを買って,アーモンドクランチやチ ョコレートスプレーをトッピングしようというとき,このアーモンドやチョコ レートはオプションですね。車を買ってエアコンやカーステレオを付ける,と いうのもオプションです(標準装備の場合もありますが)。 ・・・・毎度ながら,コンピュータになかなか近づかない原稿であることだなあ (詠嘆)。気を取り直し,コンピュータでのオプションのお話に,無理やりぐ いぐいっ。 まず,誰もがすぐ思い浮かべるのが「オプションハード」という言葉でしょ う。これは,コンピュータ本体に付加する各種ハードウェア(I/O機器)で, それを「付けるか付けないかを選べ」て,かつ「いろいろな種類から選べ」る ものを表しています。たとえば,モニタ分離型のTOWNSなら,モニタディ スプレイはオプションハードにあたります。小さく安い24ドット熱転写プリン タから,ソフトの完全対応が待たれる48ドットバブルジェットプリンタ,高速 だが同時にかなり高価なページプリンタまで,ラインナップから選べるプリン タもそうですね。最近,競うように大容量化,廉価化の進むハードディスクや 増設RAMも,TOWNSユーザーにとっては嬉しいオプションたちです(楽 しみが増えると,それに反比例して財布が軽くなる,という経済学的な法則が ありますが,これについてはいずれ論文を・・・・)。 「オプションソフト」という言葉もあります。でも,少なくともパソコンの世 界では,ゲームやホビーツールやビジネスツールなど,どのソフトをとっても (あるいは根幹にあるOSすら)ユーザーが選択して買ったり使ったりするも のですから,そう意味がある言葉とは思えませんね。特定機種について,関連 ハードやアプリケーションソフトが多い少ないという話題の中で,「オプショ ンハード・ソフトが充実している」などという言い方をするときくらいしか登 場しません。 一方,「オプションスイッチ」という言葉があります。これ,何でしょう。 パソコンの電源スイッチがオプションハードとして売られているのでしょうか ? そうではありません(当たり前ですね)。これについては,ちょっとやや こしいので,次の項で説明します。 ■オプションスイッチ 「オプションスイッチ」というのは,実は,ソフトウェア(具体的にはMS- DOSや,MS-DOS上のコマンドなど)のマニュアルに出てくるような言 葉です。ですから,前の項のオプションハードについての知識はいったんおい といて,頭を真っ白にして読んでください(「明日のジョー」みたいに,じゃ ないですよ。念のため)。 後のページでも詳しく説明しますが,MS-DOSのコマンドなどには, 「パラメータ」というものが付くことがあります。簡単に説明すると, copyだのdir だのformatだのといった,コンピュータに与える命令がコマ ンド で, そのコマンドを文字で書くところがコマンドライン(MS-DOSやTown sOS V2.1のコマンドモード) で, コマンドに付けてその内容を補助するのがパラメータ(引き数,補助変数) といった具合です。つまり,コンピュータに「□○してね」と命令するとき, 「◇△を」とか,「どのくらい」「いくつくらい」という目的語的な情報を与 えるのがパラメータです。 たとえば,コンピュータに「内蔵音源で歌ってね」というコマンドを与える とき,「〜の歌を」とか「二番から」とか「上手に」とか(無理か・・・・)いう のがパラメータですね。 さて,このパラメータには,必ず与えないと動作しないものと,そうでもな いものとがあります。たとえばファイルを複写するcopyコマンドでは,最低で もコピー元のファイル名を指定しないと,コンピュータは何もできません。同 様に,ディレクトリを表示するdirコマンドも,どのディレクトリを表示する かを指定しないと困ります。もちろん,普段は単に dir とやってますけど,これはカレントディレクトリといって,自分が今いるディ レクトリを表示しなさい,という暗黙の了解があるから──つまりパラメータ が省略可能だから──いい,というだけのことです。 さらには,コマンドによっては,実行後,パラメータにあたる内容,「〜を」 や「いくつくらい」を聞いてくるものもあります。 さて。dirコマンドには,パラメータとは別に,「オプションスイッチ」な るものがあります。たとえば, dir /w とすると,普段は画面に縦に際限なくスクロール(テキストなどがずらずら流 れていくこと)して表示されていたディレクトリが,日付や大きさ(バイト数) を省かれ,横5列にファイル名だけ表示されるようになります。あるいは, dir /p とすると,1画面分表示したところでスクロールが止まり,何かキー入力が行 われるまで待ってくれます。 これらの「/w」や「/p」は,とくに指定しなくてもdirコマンドの働きはは たせるのですが,指定することによって特別な働きを付加できるわけで,これ らを「オプションスイッチ」といいます。 ところで,富士通の「MS-DOSリファレンスマニュアル」を見ると, 「/w」「/p」などのことを「オプションスイッチ」と明記して,一般のパラメ ータとははっきり区別しているようですが,実際は,この区分はそう絶対的な ものではありません。パラメータの一部をオプションスイッチと呼ぶか,それ ともオプションスイッチ全般のことをパラメータと呼ぶか等は,そのコマンド の作り方や,作者,あるいはマニュアルの筆記者次第ではないでしょうか。 なお,普段使っているコマンドにどのようなオプションスイッチがあるかは, 気が向いたときにマニュアルで調べておいてください。ここではこれ以上触れ ません。なにしろオプションというくらいで,知らなくともなんとかなるもの も多いようですから。 ■オプティマイズ オプションとくれば,次はオプティマイズ!! ・・・・嘘です。英語のスペルは 似てますが,この2つの言葉に(語源はともかく,コンピュータ用語として) あんまり関係はありません。 「オプティマイズ(optimize)」は,プログラム開発に関する話題で登場する 言葉です。直接の訳語は「できる限り能率的に利用する」といった意味なんで すが,たとえばC言語で書かれたソースプログラムを実際にコンピュータ上で 動作するマシン語プログラムに変換(コンパイル)する際,極力効率のよい, つまり小さくて高速なプログラムになるよう調整,修正することをいいます。 オプティマイズには,プログラマが手作業で行う場合と,C言語コンパイラ などの開発ツールが自動的に行ってくれる場合があります。後者の場合では, たとえば「○○というC言語は,オプティマイズ機能が強力なので,効率のよ いオブジェクトが生成される」などという感じですね。もっとも,オプティマ イズを効かせすぎると,必要な部分まで消えてしまうことだって起こりかねま せん。 初心者の方には,C言語だのコンパイルだの,ちょっとドキドキする難しそ うな言葉が並んでしまいましたが,「なんだか知らないけどプログラムを効率 よくすることなんだなぁ」と覚えておけば充分でしょう。 ■オプティカル・・・・ ここまできたらもう,「オプなんたら・・・・」という用語の解説で走ってみま しょうか。 「オプティカル(optical)」とは,「目の,視力の,光学的な」といったよ うな意味の言葉です。このままでコンピュータ用語として出てくることはめっ たにありませんが,たとえば,次のような用語の原語に使われています。 〔光ディスク(optical disk)〕 プラスチックなどに包まれた金属の薄い膜に,ピットと呼ばれる小さな穴を 開け,レーザーを用いてデジタルデータを読み出す円盤型の媒体のこと。 ちなみに,レーザーとは,入力された電力を非常に狭くて強力なコヒーレン ト光または赤外線に変換すること,だそうです(深くは聞かないこと)。実は, このレーザー理論の発見者で,後にノーベル賞を授賞した物理学者こそが,T OWNSの開発コード名の元となったTOWNES博士なんですね。 コンパクトディスク(CD)やレーザーディスク(LD)は光ディスクの代 表選手ですが,この2つのような再生専用タイプのほか,一度だけなら書き込 み可能な追記型や,書き換え型もあります。 〔光磁気ディスク(magnetic optical disk,MO)〕 磁気とレーザーを利用してデータの読み書きを行う円盤型の媒体のこと。あ らかじめ磁化された記録膜にレーザー光を当てて磁化の方向を変え,情報を記 録します。問題は上書きするときで,いったん記録時と逆向きに磁化して情報 を消し,その上に情報を書き込む,という二度手間をかけるため,やや時間が かかってしまいます。CD-ROMと違い,パーソナルユーザーにも書き換え ができるという大きなメリットがありますが,価格や企画の問題から現状では まだまだ普及途上ですね。また,媒体が安くないため,CD-ROMのように データの配布に使うにも無理がありそうです。5インチのものに加えて,最近 では廉価な3.5インチタイプも登場しましたし,おまけに一部分はROMとし て書き込み不可にするパーシャルROMなどというタイプまで出現し,商品化 が進んでいます。 現在,5インチではたせなかった統一規格をめぐり,各メーカーが熾烈な競 争をしているところですが,はたして結末はどうなることでしょうか? (付記:上の文章を書いてから,すでに数年が経ちましたが,3.5インチMO の標準フォーマットについては,128Mバイト,新しい230Mバイトともにまだ まだ未決着で,市場は大きくなったものの,まだパソコン1台に1MOドライ ブ,というレベルにはいたっていません。それでも,メディア1枚はずいぶん 安くなって,ありがたいのですけどね。) 〔光ファイバー(optical fiber)〕 情報を伝達するのに光を用いることにより,低損失を実現したケーブルのこ とです。 中心部に屈折率の高いコアを置き,その周囲を屈折率の低いクラッドで囲む ことにより,コアに入った光は閉じ込められ,減衰せずに遠くまで伝えられま す。・・・・と,理屈はわかるんですが,なんとなくマユツバな話ではありますね。 でも,すでにどしどし実用化されているんですから,きっと役に立っているの でしょう。 〔光学走査装置(optical scanner)〕 文字や図形を光学的に読み取る装置のことです。・・・・というとおおげさです が,コピー機やファクシミリ,イメージスキャナがこれにあたります。なぁん だ,でしょ? ■オプティミズム 「オプ・・・・」シリーズで最後にご紹介する「オプティミズム(optimism)」と は,要するに「楽観」「楽天主義」という奴で,これを心にまとった人をオプ ティミスト,一般に「楽天家」とか「脳天気」とか「極楽トンボ」等々と称し て高く評価します。たとえば今現在の僕のように,締め切りがとうに過ぎた日 に原稿を書いている人のことをいうのでしょうね。まぁ,なんとかなるでしょ う(編集部注:ならない,ならない!!)。